バトゥ洞窟の歩き方|272段の虹色階段と42.7m黄金像を子連れで

高さ42.7mの黄金ムルガン像と、洞窟へ続く272段の虹色階段の全景

クアラルンプールで「ここだけは外せない」と言われる場所があります。石灰岩の崖にぽっかり開いた洞窟のなかにヒンドゥー教の寺院があり、その入口を高さ42.7mの黄金の神様が見下ろしている——バトゥ洞窟です。

この日は午前中に錫の工房を見学して、その足でGrabに乗って移動。写真で見て「大きいんだろうな」とは思っていたのですが、実物は完全に想像の外側でした。小学3年生のメイと272段の階段を上ってきたので、猿対策や服装、そして帰りの足でハマった落とし穴まで、まとめて残しておきます。

目次

クアラルンプールのバトゥ洞窟へ|市内から車で30分の別世界

バトゥ洞窟はKLの中心部から北へ13kmほど、セランゴール州のゴンバッという場所にあります。我が家はロイヤル・セランゴール ビジターセンターの見学を終えてから、そのままGrabで向かいました。地図上は車で25分くらいの距離です。

ただ、実際には近づくほど渋滞がひどくなりました。洞窟目当ての車が一本道に集中するので、周辺で完全に流れが止まります。事前に調べたときに「朝一の訪問がおすすめ」と何度も書かれていた理由が、車の中でよくわかりました。到着はお昼前でした。

バトゥ洞窟の広場に置かれたカラフルな「BATU CAVES」のサインオブジェ
のんたん

広場に「BATU CAVES」のカラフルなサイン。ここまで来ると、渋滞のイライラはもうどこかに行ってました。

高さ42.7m、世界一の黄金ムルガン像と虹色の272段

広場に足を踏み入れた瞬間、視界がまるごと持っていかれます。緑をまとった石灰岩の崖、そこに向かって伸びる虹色の階段、そして手前に立つ黄金の巨人。

高さ42.7mの黄金ムルガン像と、洞窟へ続く272段の虹色階段の全景

この黄金像はヒンドゥー教の神様・ムルガン神。高さは42.7m(140フィート)で、ムルガン像としては世界一の高さだそうです。除幕されたのは2006年1月。制作に3年かかり、鉄筋350トン、コンクリート1,550立方メートル、そして金色の塗料はタイから取り寄せた300リットル。インドから招いた15人の彫刻家が手がけたと記録されています。

バトゥ洞窟の黄金のムルガン像と、背後にそびえる石灰岩の崖

首が痛い! ぜんぶ見るのに顔を上げないと無理だよ!

のんたん

マンションでいうと14階建てくらいの高さだからね。写真だと絶対に伝わらないやつです。

広場の周りには、ほかにも大きな像がいくつも立っています。青緑色の体をしたハヌマーン——ラーマーヤナに登場する猿の神様です。そしてもう一方の崖下には、翼を広げた巨大な鷲。

バトゥ洞窟の麓に立つ青緑色のハヌマーン(猿の神様)の巨大像
石灰岩の崖の下に翼を広げて立つ巨大な鷲の像
ノリス

洞窟そのものは4億年前の石灰岩で、寺院ができたのは1890年。時間の桁が違うものが同じ場所に積み重なっているのが面白いんですよね。

猿は「かわいい」より先に「油断できない」

バトゥ洞窟にはたくさんの猿(カニクイザル)が暮らしています。人を怖がる気配がまったくなく、階段にも欄干にも塔門の屋根の上にも、どこにでもいます。

バトゥ洞窟の極彩色のゴープラム(塔門)の屋根の上に座っている猿。周囲はヒンドゥーの神々の彫刻で埋め尽くされている

足元では、どこかで手に入れた果物を器用にむいて食べている一匹。両手で持って、皮を歯で引っぱって、完全に「食事中」の顔をしていました。

バトゥ洞窟の石畳で、果物を両手に持って器用に皮をむいて食べている猿
参拝路の足元にいる猿。人を怖がる様子がない

階段の途中では、欄干の擬宝珠の上に親子で乗っている姿も。赤ちゃん猿がお母さんのお腹にしがみついていて、ここだけは完全に和みの時間でした。

階段の欄干の擬宝珠に乗る母猿と、しがみつく赤ちゃん猿

赤ちゃんいる! ……でもこっち見てる。目、合わせないほうがいい?

のんたん

正解。かわいいけど野生だからね。手に何も持たないで、リュックのチャックだけ確認しておこう。

猿への対策(実際にやったこと)
  • 食べ物・飲み物は手に持たず、必ずバッグの中へ。ビニール袋は「食べ物が入っている合図」なので出さない
  • リュックのファスナーは全部閉める。外ポケットにペットボトルを挿さない
  • スマホは手首ストラップか、撮ったらすぐしまう
  • 目を合わせない・餌をあげない。子どもには先に「触らない」を約束させる

272段の虹色階段|スニーカーで来るべき理由

洞窟の入口まで、階段は272段。下から見上げると、ピンク・緑・青・黄が段ごとに塗り分けられていて、そのまま崖の割れ目に吸い込まれていくように見えます。

バトゥ洞窟の272段の虹色階段を下から見上げた眺め

一段一段はそれほど高くないのですが、とにかく日陰がありません。マレーシアの昼前の日差しをまともに浴びながら上ることになるので、途中で足が止まっている人もたくさんいました。メイとは手をつないで、20段くらいごとに横に寄って休みながら進みました。

色とりどりに塗り分けられた272段の階段を手をつないで上る

そして気づいたのが、裸足で上っている人がとても多いこと。洞窟の奥にある寺院が土足禁止なので、はじめから靴を脱いで参拝される方が少なくないんです。ただ観光で行く場合、石段は日差しでかなり熱くなっているので、履き慣れたスニーカーで上って、奥の寺院に入る手前で脱ぐのが現実的だと思います。サンダルは段差で滑るので避けたほうが安心でした。

途中で振り返ると、これが思わぬごほうびでした。木々の切れ目からムルガン像の頭が見えて、その向こうにクアラルンプールの高層ビル群が並んでいます。

階段の途中から振り返った眺め。黄金のムルガン像の頭とクアラルンプールの街並み
ノリス

272段が「しんどいけど無理ではない」設計なのが効いていると思います。上りきった人だけに景色が開ける構造で、記憶の残り方がまるで違うんですよね。

洞窟の中は、街ひとつが入りそうな空間だった

上りきると、いよいよ洞窟の入口です。ここで勘違いしやすいのですが、洞窟に入る時点では靴を脱ぐ必要はありません。土足禁止になるのは、洞窟の奥にある寺院の区画に入るときです。

テンプル・ケイブの入口を内側から見上げた巨大な空洞。奥へ続く通路と参拝者が小さく見える

一歩入って最初に目に飛び込んでくるのが、この空間です。奥へ続く通路を歩く人が、豆粒のように小さく見えます。272段を上った先にこれが待っているとは、下からは想像もできませんでした。

そして一歩入って、家族全員が黙りました。天井がどこまで高いのか目で追えないんです。ひんやりした空気と、岩を伝う水の音。外の暑さが嘘のようでした。

バトゥ洞窟の入口を内側から見上げた、鍾乳石が垂れる石灰岩の巨大な岩壁

その岩の壁の内側に、極彩色のゴープラム(塔門)が建っています。自然の造形と、人が塗り重ねた色。まったく別の理屈でできたものが、同じフレームに収まっているのが不思議な光景でした。

バトゥ洞窟の内部に建つ極彩色のゴープラム(塔門)と、覆いかぶさる巨大な岩壁

そして、この寺院の区画に入る手前に立っているのがこの掲示です。英語・マレー語・タミル語の3言語で「NO SHOES」。靴を脱ぐのはここから先で、洞窟に入るところまでは履いたままで問題ありません。ここを勘違いして入口で脱いでしまうと、ひんやりした岩肌の通路を裸足で歩くことになるので、掲示を見つけてから脱ぐのが正解です。

洞窟の奥にある寺院区画の手前に立つ「NO SHOES(土足禁止)」「NON SMOKING」の3言語の掲示

奥に進むと、天井にぽっかり空いた穴から光が降ってきます。細い植物が縁からぶら下がっていて、その真下だけがスポットライトを当てたように明るい。ここが一番、メイが動かなくなった場所でした。

洞窟の天井に空いた穴から光が差し込み、植物が垂れ下がっている

屋根に穴が開いてるのに、なんで誰も直さないの?

のんたん

ここは人が建てた屋根じゃないんだよ。この穴があるから、洞窟の中でも植物が生きていられるんだ。

バトゥ洞窟のテンプル・ケイブ内部の広大な空間と奥の祠

忘れてはいけないのが、ここは観光地であると同時に今も生きているヒンドゥー教の聖地だということ。1890年にインド人商人のK.タンブーサミ・ピライがこの洞窟にムルガン神の祠を建てたのが始まりで、それから130年以上、参拝が途切れずに続いています。実際、私たちの横を、お供えを持った地元の方が静かに通り過ぎていきました。

洞窟寺院の階段の途中から、岩壁と祠を見上げる
ノリス

観光客が写真を撮る横で、普通に祈っている人がいる。この距離感を子どもがその場で見られるのが、この場所のいちばんの価値だと思います。

下りで見える景色が、また違う

帰りの階段は、上りとまったく別の体験でした。正面にムルガン像の後ろ姿があり、その肩越しにクアラルンプールの街がずっと奥まで広がっています。

下りの階段から見た黄金ムルガン像の背中と、その先に広がるクアラルンプールの街

もう少し下ると、麓の寺院群を屋根の高さから見下ろせます。極彩色の神々の彫刻がびっしり並んだ屋根は、下から見ているだけでは絶対に気づけない部分でした。

階段の上から見下ろした、麓のヒンドゥー寺院群の極彩色の屋根
のんたん

「上って、下りる」だけの場所なのに、往復で見えるものが全部違う。これは行かないとわからなかったです。

今回かかった費用と時間(家族3人)

テンプル・ケイブの拝観料 RM0(無料)
階段・洞窟内の見学 RM0(無料)
参考:KTMコミューター運賃 KLセントラル〜バトゥ・ケイブス 片道RM2.60(約35分)
滞在時間 1時間弱(272段の往復+洞窟内の見学)

ラーマーヤナ洞窟など一部の洞窟は別料金(大人RM5前後)ですが、メインのテンプル・ケイブは完全に無料です。この規模の体験にお金がかからないのは、正直かなり驚きました。

パパのワンポイント戦略|混雑回避・服装・帰りの足

実際に行ってみて「これは先に知りたかった」と思ったことを、正直に並べます。

  • やっぱり朝一が正解。お昼前に着いた我が家は、周辺の渋滞と炎天下の階段をまともに食らいました。朝の早い時間なら道も空いていて、石段もまだ熱くなっていません。
  • 肩と膝が隠れる服装で。寺院なので露出のある服だと入口でサロン(腰に巻く布)を借りることになります。目安はRM5〜10ほど。最初から長めのパンツやスカートで行くほうがラクです。
  • 靴は履き慣れたスニーカー。272段はサンダルだと滑ります。土足禁止になるのは洞窟の奥の寺院区画だけで、洞窟に入るところまでは靴のままでOK。脱ぎ履きしやすいものが理想です。
  • 水は持つ。ただし手には持たない。猿対策とセットで考える必要があります。バッグに入れて、休憩のときだけ出すのが安全でした。
  • 帰りの電車は本数が少ない。ここが最大の落とし穴でした。我が家が駅に着いたのは電車が出た5分後で、次まで1時間。時刻を先に調べて逆算しておくべきでした。階段を降り切って右に曲がり、5分ほど歩くと駅です。
  • 洞窟の目の前ではGrabが呼べない。配車アプリの指定不可エリアになっているようで、いくら試しても捕まりません。駅を洞窟と反対側の出口から出て少し歩くと呼べるエリアに入るので、電車を逃したらそちらへ回るのが現実的です。
  • 階段の手前に軽食の店がある。上る前の水分補給や、下りてきたあとのひと休みに使えます。
ノリス

入場が無料なぶん、コストは全部「時間」で払う場所なんですよね。渋滞と電車の本数を先に読んでおけば、体験の質がそのまま上がると思います。

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※拝観そのものは無料なので、お金がかかるのは行き帰りの足の部分だけです。周辺は渋滞しやすく、洞窟のすぐそばでは配車アプリが呼べませんでした。自分で手配するのが不安な方は、ホテル送迎付きの半日ツアーなら行きの渋滞と帰りの足の心配がまとめて消えます。価格・催行状況は各サイトの表示が最新です。

今回の「おもしろ発見(旅育)」まとめ

旅育ポイント
  • 「屋根の穴、なんで直さないの?」——自然と建築の境目に気づいた。天井の穴から光が落ちてくる場所で出てきた質問でした。人が作ったものと、地球が作ったものが同じ空間に同居している。その違いを目の前で説明できたのが良かったです。
  • 観光客の横で、普通に祈っている人がいた。ここが「見る場所」であると同時に「信じている人の場所」でもあると、メイは声のトーンを落とすことで理解していました。誰にも教わらずに静かになったのが印象的でした。
  • 猿は「かわいい」と「野生」が同じ顔をしている。赤ちゃんを抱えた母猿を見て和んだ直後に、荷物を狙う視線に気づく。動物園とは違う距離で野生と向き合った経験になりました。
  • マレーシアには「3つの世界」が普通に隣り合っている。この旅ではモスクも中華寺院も見てきました。同じ国の中でイスラム教・仏教・ヒンドゥー教の場所を続けて訪ねたことで、「いろんな神様がいる国なんだね」という言葉が自然に出てきました。

バトゥ洞窟の総合評価と施設情報・アクセス

★ 総合評価

観光・体験の満足度 ★★★★★(高さ42.7mでムルガン像としては世界一の黄金像、4億年前の石灰岩にできた洞窟の中に建つヒンドゥー寺院、272段の虹色階段。この3つが同じ場所に揃っていて、しかも無料。代わりになる場所が思い当たりません)
子連れのしやすさ ★★★☆☆(272段の階段に日陰がほとんどなく、猿に食べ物を狙われ、奥の寺院区画では靴を脱ぐことになります。ベビーカーは実質使えません。小学3年生なら手をつないで休みながら上れましたが、子ども向けの配慮がある施設ではないので正直に★3)
コスパ ★★★★★(メインのテンプル・ケイブは拝観無料。ラーマーヤナ洞窟など一部が別料金なだけで、この体験の密度に対して支出はほぼゼロです)
アクセス・利便性 ★★★☆☆(KTMコミューターでKLセントラルから約35分・RM2.60と行きは簡単ですが、運行間隔が30〜60分で帰りに詰まります。周辺は渋滞し、洞窟の目の前ではGrabも呼べません。行きやすいけれど帰りに工夫が要る、という意味で★3)

【施設名】バトゥ洞窟(Batu Caves)
【所在地】Gombak, 68100 Batu Caves, Selangor, Malaysia
【営業時間・定休日】おおむね7:00〜21:00(洞窟・売店により変動。年中無休)
【料金目安】テンプル・ケイブは拝観無料/ラーマーヤナ洞窟など一部の洞窟は別料金(大人RM5前後)/ダークケイブはガイドツアー制
【アクセス】KTMコミューター「バトゥ・ケイブス駅」下車すぐ(KLセントラルから約35分・片道RM2.60、運行間隔30〜60分)/車・Grabなら市内中心部から30分前後(周辺は渋滞しやすい)
【服装】肩と膝が隠れる服装。入口でサロンの貸出あり(RM5〜10程度)。土足禁止は洞窟の奥にある寺院区画のみで、洞窟に入るところまでは靴のままで問題なし
【公式情報】https://www.malaysia.travel/explore/batu-caves
※最新の開門時間・料金・行事の開催状況は、必ず公式の観光情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

関西在住の40代。妻マイ・娘メイとの家族旅行を「旅育」として綴る、ブログ「のんたん家のはなし」の筆者です。夫婦そろって大手小売・流通グループのフルタイム管理職。ANAプラチナ(SFC)・ヒルトンダイヤモンド・マリオットプラチナの上級ステータスを活かしたVIP体験と、47都道府県制覇の旅の記録を、パパ目線でお届けしています。現在はANAダイヤモンドへの復帰を目指して修行中です。

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