2026年7月、シドニーのひとり旅。港の絶景をひととおり味わったあと、少しだけ趣向を変えて、街のど真ん中にある「建物そのものが観光名所」という場所へ歩いてみることにしました。目的地はクイーン・ビクトリア・ビルディング(QVB)。1898年に建てられた、シドニーでいちばん華やかと言われる歴史建築です。この記事は、市役所前を抜けてQVBまで歩き、館内をたっぷり眺めて、最後は路面電車でサーキュラーキーに戻るまでの、ゆるやかな午後の記録です。
まずはジョージ・ストリートを南へ、市役所前まで
シドニーの中心を貫くのがジョージ・ストリート。この通りの真ん中を、赤い車体の路面電車(ライトレール)がすーっと走っていきます。車も入ってこられない歩行者中心の大通りで、線路沿いをのんびり歩くだけで気持ちのいい道でした。

通りの途中で足を止めたのが、砂色の堂々とした建物、シドニー市役所(Sydney Town Hall)です。時計塔をいただいた重厚なつくりで、1880年代に建てられたビクトリア朝の名建築。ただ、この日は正面が工事の囲いで覆われていて、残念ながら全体はすっきり見られませんでした。歴史ある建物を長く使い続けるには、こうしたメンテナンスの時間も必要なんですよね。

のんたんガラス張りの高層ビルの谷間に、こういう石造りの古い建物がぽつんと残っているのが、シドニーの街の面白いところでした。新しいものと古いものが、けんかせずに同じ通りに並んでいるんです。
市役所の向かいには、この日のお目当てが見えてきました。通りの一区画をまるごと占領する、大きなアーチ屋根の建物。あれがQVBです。


クイーン・ビクトリア・ビルディング、130年前の「不況対策」
QVBは、ジョージ・ストリート、マーケット・ストリート、ヨーク・ストリート、ドルイット・ストリートに囲まれた一区画をまるごと使った、幅30メートル・長さ190メートルの巨大な建物です。外観はどっしりとしたロマネスク・リバイバル様式。設計したのは、当時わずか28歳だった建築家ジョージ・マクレーだそうです。


面白いのは、この壮麗な建物が建てられた時代背景です。完成は1898年。じつは当時のシドニーは深刻な不況のただ中で、これだけ手の込んだ装飾建築をわざわざ計画したのには理由がありました。石工、左官、ステンドグラス職人といった、仕事を失っていた大勢の職人たちに働く場を与えるため。つまりQVBは、名前こそビクトリア女王に捧げる記念建築ですが、その中身は立派な「公共事業=失業対策」だったんですね。



不況のときにあえて豪華な建物を作って雇用を生む、という発想が興味深いんです。しかも130年経った今も現役の商業施設として稼いでいる。目先のコストではなく、街に長く残る資産を作った投資だったんだと思います。
中に一歩入ると、そこはもう「買い物のための大聖堂」
入口の扉を抜けて、思わず「おお」と声が出ました。天井が高く、両側に上品な店構えが並ぶアーケード。木とガラスと鉄が組み合わさった内装は、ショッピングモールというより、まるで教会か駅舎のようです。今は5つのフロアに140以上のブティックやカフェが入る現役の商業施設ですが、歩いているだけで美術館に来たような気分になりました。


いちばん目を奪われたのが、館内のあちこちにあるステンドグラスと、19世紀そのままの階段です。アーチ型の大きな窓に色ガラスがはめ込まれ、外の光が館内にやわらかく落ちてきます。手すりの鉄細工も一つひとつ手が込んでいて、さっきノリスが言っていた「職人たちの仕事場」という話が、そのまま形になって残っているんだなと実感しました。


そして、この建物の主役ともいえるのが、中央にそびえるセンター・ドームです。真下から見上げると、色とりどりのステンドグラスが円を描いていて、その美しさに足が止まりました。じつはこのドームは二重構造で、内側がガラス、外側が銅板張り。直径は約19メートル、地上からてっぺんまでは約60メートルもあるそうです。





首が痛くなるまで見上げてしまいました。買い物客が忙しく行き交うすぐ頭の上に、こんな静かで壮大な天井が広がっている。日常のすぐ隣に非日常があるのが、なんとも贅沢な場所でした。
からくり時計に、また足が止まる
館内を歩いていると、吹き抜けにぶら下がる大きくて豪華な時計が目に入ります。これがロイヤル・クロック(Royal Clock)。金色の小さなお城のような飾りの下に、青い文字盤とたくさんの人形が組み込まれています。


この時計、毎正時になると仕掛けが動き出し、イギリス王室にまつわる6つの場面が、ジェレマイア・クラークのトランペットの調べとともに次々に現れます。ちょうど時間が近かったので待ってみたのですが、細かい人形たちがくるりと動く様子は、大人が見てもわくわくするものでした。


QVBには、もう一つ有名な時計があります。館内の反対側にあるグレート・オーストラリアン・クロック。こちらは高さ約10メートル・重さ4トンという巨大なもので、アーティストのクリス・クックが手がけた作品です。オーストラリアの歴史を、先住民アボリジニと入植者の両方の視点から描いた33の場面が組み込まれていて、外側では狩人が絶え間なく時計のまわりを回り続け、「終わりのない時の流れ」を表しているのだそうです。





時計を建物の両端に一つずつ置いて、人の足を館内の奥まで自然に歩かせる。ただの飾りに見えて、じつは回遊してもらうための仕掛けにもなっているのが面白いんですよね。
地下道を抜けて、ばらまき土産の調達へ
ひととおり建物を堪能したあとは、実用的なミッションへ。じつはQVBやシドニー市役所のあたりは地下道でつながっていて、地上の信号を渡らずにお店を回れるようになっています。雨の日でも濡れずに移動できるのは、旅行者にはありがたい造りでした。
道すがらのコンビニでは、思わぬ発見もありました。レジ横にクリスピー・クリーム・ドーナツが並んでいたんです。日本ではドーナツ専門店で買うイメージですが、こちらでは街なかのコンビニでさらっと売られていて、こういう「国によって売り方が違う」瞬間に出会うのが、海外の街歩きの楽しさだなと思いました。


そして、ばらまき土産の本命はやっぱりスーパーのウールワース(Woolworths)でした。ウールワースはオーストラリアを代表するスーパーマーケットチェーンのひとつで、シティのあちこちにあり、タウンホール駅の地下街にも入っています。観光客向けのお土産屋さんよりずっと安く、地元の人が普段づかいするお菓子がそのままの値段で手に入るのが強みです。
狙い目は、なんといってもオーストラリアの国民的チョコビスケットティムタム(Tim Tam)。アーノッツ(Arnott’s)社の看板商品で、パッケージには「THERE IS NO SUBSTITUTE(これに代わるものはない)」の一文。ほかにも同じアーノッツのスコッチフィンガー、キャドバリー(Cadbury)のデイリーミルクや、コアラの絵がかわいい「キャラメロ・コアラ」など、日本ではなかなか見かけないご当地パッケージがずらりと並んでいました。ついカゴいっぱいに入れてしまいます。


お菓子売り場に入ると、ティムタムだけでも棚一面。オリジナル、チューイキャラメル、ダークと種類が豊富で、どれにしようか選ぶ時間そのものが楽しいんです。ひと箱11枚入りくらいの手ごろなサイズなので、会社や友人に配るばらまき用にちょうどよく、何箱かまとめて確保しました。




そして地味に助かるのが、黄色い「Special(お買い得)」の値札。「Any 2 for ○ドル」のように、2個まとめて買うと割引になる表示があちこちに出ていて、値札には100gあたりの単価まで書かれています。ばらまき土産のように数が要る買い物とは、この仕組みがとても相性がいいんですよね。





値札が『1個いくら』ではなく『2個で』表示になっているのは、まとめ買いを自然にうながす設計なんですよね。数が要るばらまき土産とは相性がよくて、単価も下がる。ちょっと得した気分になります。
お会計はセルフレジが主流で、英語が不安でも画面のとおり進めれば大丈夫でした。ひとつだけ注意したいのが、レジ袋は基本的に有料だということ。折りたたみのエコバッグを一枚カバンに忍ばせておくと安心です。地下街に直結しているので、買い込んだあとも雨に濡れずにホテルへ戻れました。
帰りは路面電車で、しかも「実質無料」でサーキュラーキーへ
お土産の袋を提げて、帰りはジョージ・ストリートの路面電車(ライトレール)でサーキュラーキー方面へ。この日はここまでフェリーやバスをしっかり乗り継いでいたので、じつは交通費が「実質無料」になっていました。





シドニーの交通ICカード「Opal」は、土日祝だと1日の支払い上限(この時は約9.65豪ドル)が決まっていて、そこに届くとあとは何回乗っても無料なんです。フェリーで先に上限へ届いていたので、この路面電車はタダで乗れた計算になります。
「上限に達したら乗り放題」と分かっていると、移動そのものがちょっとした遊びになります。歩いて疲れたら気軽に一駅だけ乗る、みたいな贅沢ができるんですね。フェリーやライトレールの運賃と1日上限のくわしい仕組みは、シドニー フェリー完全ガイドにまとめています。路面電車の窓から流れていくシドニーの街並みを眺めながら、建物めぐりのいい一日だったなと、静かに満足していました。
★ クイーン・ビクトリア・ビルディングの総合評価
★ 総合評価(ひとり利用・2026年7月訪問)
観光・体験の満足度 ★★★★★(1898年築のロマネスク建築、直径19メートルの銅とガラスの二重ドーム、王室の場面が動くロイヤル・クロック、高さ10メートルのグレート・オーストラリアン・クロックと、ここでしか見られない見どころが濃い。州の歴史登録建築を無料で歩けるのは代替がききません)
ひとり・出張での使いやすさ ★★★★☆(屋内で天候に左右されず、一人でぶらぶら建築を眺めるのに最適。カフェも多く小休止しやすい一方、あくまで現役の商業施設なので、静かに鑑賞というより買い物客の流れの中で楽しむ場所です)
コスパ ★★★★★(建物の見学そのものは無料。何も買わなくてもドームやステンドグラス、2つのからくり時計を心ゆくまで楽しめて、費用対効果は突出しています)
アクセス・利便性 ★★★★☆(シティ中心部でジョージ・ストリートの路面電車が目の前、地下はタウンホール駅直結と公共交通は抜群。一方でCBDのど真ん中ゆえ、車・駐車場での訪問には不向きです)
このクラスターの全体まとめはシドニーソロ旅まとめ|ANA修行×お得ビジネスで巡る世界遺産1泊2日でまとめています。あわせてどうぞ。
施設情報
【施設名】クイーン・ビクトリア・ビルディング(Queen Victoria Building / QVB)
【所在地】429–481 George St, Sydney NSW 2000, Australia
【営業時間】月〜水・金・土 9:00〜18:00/木 9:00〜21:00/日 11:00〜17:00(店舗により異なる場合あり)
【料金目安】建物の見学は無料(館内での買い物・飲食は別途)
【アクセス】シティ中心部、ジョージ・ストリート沿い。地下はタウンホール駅直結、目の前をライトレール(路面電車)が運行
【公式HP】クイーン・ビクトリア・ビルディング(qvb.com.au)
※営業時間や店舗の入れ替えは変わることがあります。最新の状況は、必ず公式HPをご確認ください。
海外旅行って、有名スポットを詰め込むと移動でくたくたになりがちですよね。でもこのQVBは、街の中心にありながら、一歩入れば時間の流れが変わる特別な場所でした。しかも建物を眺めるだけなら無料で、雨の日でも快適。もしシドニーで半日ぽっかり時間が空いたら、ぜひこの「買い物のための大聖堂」をゆっくり歩いてみてください。滞在の拠点をシティ中心部のホテルにしておくと、こうした街歩きがぐっと楽になりますよ。気になった方は、下のリンクから空室状況や最新プランをのぞいてみてくださいね。良い旅になりますように!
クイーン・ビクトリア・ビルディングのよくある質問
QVBの入場は無料ですか?
建物の見学・散策は無料です。QVBは現役のショッピングセンターなので、ドームやステンドグラス、からくり時計を眺めるだけなら料金はかかりません。館内での買い物や飲食は別途必要です。
QVBの営業時間は何時から何時までですか?
おおむね月〜水・金・土が9:00〜18:00、木曜が9:00〜21:00、日曜が11:00〜17:00です。店舗によって開店・閉店時間が異なる場合があるので、目当てのお店がある場合は公式サイトで確認しておくと安心です。
QVBへのアクセス・行き方は?
シドニー中心部のジョージ・ストリート沿いにあり、地下はタウンホール(Town Hall)駅と直結しています。目の前をライトレール(路面電車)が走っているので、サーキュラーキー方面からも一本でアクセスできます。地下道でシドニー市役所方面ともつながっています。
QVBの2つの時計はどこにありますか?
吹き抜けに吊り下がっているのが「ロイヤル・クロック」で、毎正時にイギリス王室の6場面が動きます。館内の反対側には、高さ約10メートルの「グレート・オーストラリアン・クロック」があり、オーストラリアの歴史33場面が描かれています。館内を端から端まで歩くと、両方を見られます。
QVBで買えるおすすめのお土産は?
QVB館内にはオーストラリア発の老舗チョコレート「ヘイグス(Haigh’s)」などのお店があります。ばらまき用のお菓子は、地下道でつながっているスーパー「ウールワース」でまとめ買いすると価格を抑えられます。近くのコンビニでクリスピー・クリーム・ドーナツが買えるのも、ちょっとした発見でした。









コメント